棚田の風景

棚田と谷戸田:日本の農との関係性を考える


棚田や谷戸田は安定した水利が得られるため、かっては稲作には最も適しているとされてきました。ところが近年、灌漑技術の進歩により平野部のほうが稲作には適しているとされています。おまけに平野部のほうが、大型農機を扱いやすいというメリットもあります。

その一方では、棚田の景観はすばらしく全国にある数多くの棚田が棚田百選に認定されるほどです。ここでは、そんな棚田や谷戸田について詳しくご紹介いたします。

棚田の特徴

棚田とは

棚田とは、山の傾斜地に階段状に作られた水田をいいます。ちなみに棚田と対照的なのが、階段状に作られた畑で段々畑と呼ばれています。こうした棚田は何せ山の傾斜面に作られているので、大型の農業機械を利用することが難しいというデメリットがあります。

さらには、維持管理する上においても人手がかかるので年々減少傾向にあります。その代り、見た目の景観が素晴らしい点や洪水を緩和する効果、様々な生き物の生息場所ともなっていることから、近年棚田を保存する運動がすすめられています。

棚田のメリットとデメリット

棚田の特徴としては、山の傾斜部分に作られているので日照時間が比較的長い上に昼と夜との寒暖差が激しくなります。それによるメリットは、風通しがよく害虫が付きにくいのでより美味しいお米ができるという点に尽きます。おまけに棚田百選というものがあるように、とにかく景観が素晴らしいという点も見逃すことはできません。

その代り、数々のデメリットもあります。とくに平野部にある水田とは違って、台風の影響をモロに受けるのでせっかく育った稲が全部倒れてしまいます。あるいは大型機械が入れにくかったり、用水が行き渡りにくいという点も稲作においては大きなデメリットといえます。

谷戸田

谷戸田とは、丘陵地が浸食されてできた谷状の地形を利用した水田をいいます。何分にも山と山の間にある谷間を利用した水田のために、地域によっては棚田のような地域もあるし、平坦な土地を水田に利用している地域もあります。

また棚田は日本全国に分散していますが、谷戸田の場合には東日本の丘陵地に集中しています。また棚田の場合には、水を確保するために水路を築くのが大変なケースがよくあります。
一方、谷戸田の場合には近くにある湧水から直接水を取り込むことができるので、遠くから水を取り込むための水路を築くような手間がいらないというメリットもあります。

谷戸田の特徴

谷戸田の歴史は深く、古くから谷戸を利用した農業が行われていました。ただし、山の斜面に作る棚田とは違って、山と山の谷間に作られた水田のため日照時間が短い上に水も冷たいというのが特徴というか多少のデメリットといえます。その代り、水は雨水やため池・湧水などを利用することができるので、水利に苦労することはありません。

しかも、かって谷戸田の斜面にある山は里山として利用されることも多く、薪を採取したり落ち葉を肥料に用いたりすることもできました。おまけに谷戸田では、動物の生息数が豊富なのも大きな特徴です。とくにトウキョウサンショウウオが谷戸田に生息していることは有名ですが、近年絶滅の危機に瀕しているといわれています。

日本の有名な棚田・谷戸田を紹介

日本の棚田百選

棚田はその景観があまりにもすばらしく、まるで芸術作品を眺めているような印象を受けます。そのため、農林水産省は1999年に全国にある棚田の中でも、とくに景観がすばらしいものを棚田百選に認定して観光地化しています。

従って、棚田百選に認定された棚田はどれも甲乙つけがたいほど、その景観にはすばらしいものがあります。そんな中、とくに千葉県鴨川市にある大山千枚田や新潟県柏崎市にある花坂の棚田、さらには長野県上田市にある姨捨の棚田、愛知県新城市にある四谷千枚田などは全国的にも超有名な棚田として知られています。

写真でよく見かける谷戸田

谷戸田は、棚田ほど見た目の景観がすばらしいというものはありません。それよりも見ていて子供の頃を思い出したり、時代劇映画やドラマに登場してくるような素朴な風景の谷戸田が数多くあります。

そんな中、写真でよく見かける谷戸田としては、福島県の鮫川村にある仁田の谷戸田は、周囲の山々の紅葉がすばらしいことで有名です。また、横浜市にある新治谷戸田や黒川の谷戸田も写真でよく見かける有名な谷戸田となっています。

まとめ

棚田や谷戸田についてご紹介しました。とくに棚田百選として観光地化されている棚田は、写真を見ているだけでも心が落ち着いたり癒されます。そして、誰もが一度は訪ねてみたいと思うのではないでしょうか。