花に止まるチョウ

里山の生物多様性


日本が経済大国になる以前においては、全国各地にある里山は人が暮らす上においては無くてはならない存在でした。またそれに伴って、様々な動植物も共存することができたといいます。おまけにそうしたことは、里山に多くの珍しい動植物が生息しているという各種の報告内容からも認識することができます。ここでは、そんな里山の生物多様性についてご紹介いたします。

里山の生物多様性について

生物多様性とは、地球に生息している生き物同士の繋がりをいいます。もう少し具体的にいえば、人間を除く動物などの世界というのは、弱肉強食の世界です。その頂点にいるのが、陸上では百獣の王といわれるライオンです。ライオンは、自分よりも弱い動物を食べながら生きています。一方、キリンのような草食動物もいます。

その代り、それらの草食動物も肉食動物の餌食になってしまう恐れがあります。また海においては、シャチや鮫などが食物連鎖の頂点に君臨しており、弱い魚を食べて生命を維持しています。このように地球上の生き物は、その全てが共存共栄の関係で成り立っているといえます。

里山には希少種が生息する

里山は、人と自然とが共存関係にあるというだけでなく、動植物にとっても住みやすい地域となっています。おまけに里山には、絶滅寸前といわれるような希少種も数多く生息しています。例えば、里山によく生息している猛禽類のオオタカやサシバは、希少種に指定されています。

また、ホクリクオオサンショウウオやトウキョウオオサンショウウオ・アベサンショウウオなども希少種とされています。さらに、メダカやサギソウ・トミヨ・コウノトリ・トキなども希少種です。そして、こうした希少種の保護活動も地域住民らによってすすめられつつあります。

日本の里山の生態系〜その過去・現在・未来

里山から恩恵を受けた過去

人と自然とが共存する里山からは随分と恩恵を受けてきました。そうした自然の恵みによる恩恵を生態系サービスと呼んでいます。とりわけ、今でこそ里山と人との暮らしも分離された状態になっていますが、過去においてはそうではありませんでした。

例えば、かっては今のような石油燃料というのはほとんどありませんでした。そのため山から切り出してきた薪を燃料源としていました。もちろん今でも、山から切り出してきた樹木を住宅建築用の木材に利用しています。さらには、栗や山菜・タケノコなども貴重な食糧源でした。

里山の放棄や破壊に伴う生態系の危機

今日では、過去において多くの恩恵を受けてきた里山が放棄されて雑木林化しています。あるいは、里山を切り崩して、ゴルフ場やダム建設・宅地開発などがどんどんとすすめられています。もはやそうなると、かってあった里山の景観というものはないに等しいといえます。

またそれに伴って、里山に生息していた様々な動植物も絶滅の危機に瀕しているといいます。もちろん、人が無暗に動物を捕獲しないまでも、里山が放棄・破壊されることによって動植物の生態系が変わりつつあるといわれています。そうしたことから、今ある生態系を未来まで残していく必要から里山の保護活動も徐々にすすめられています。

絶滅危惧種を守ろう

絶滅危惧種とは

絶滅危惧種とは、読んで字のごとくでほとんどの方が推測することができます。ところが、実際にどんな動植物が絶滅危惧種なのかは分からないのではないでしょうか。例えば、魚の中では誰もが知っているメダカがそうです。

さらには、トミヨやホトケドジョウウなども絶滅危惧種に指定されています。また蝶の仲間では、オオムラサキやギフチョウが絶滅危惧種です。そして植物では、ササユリやミズアオイなども絶滅危惧種に指定されています。しかしながら、各地域の保存会やボランティア団体などによって保護活動もすすめられています。

絶滅危惧種の多くが里山に生息している

里山の放棄や荒廃は、日本の豊かな生物多様性が失われることを意味しています。例えば環境省の報告によると、絶滅危惧種の多くが原生の自然が残された地域よりも、むしろ人の手が加えられた里山に集中しているといいます。

例えばメダカの場合には、その約7割が里山に生息しているということが確認されています。あるいは、約6割相当のギフチョウも里山に生息しているといいます。そうしたことからも、里山をこのまま放棄や破壊してしまうことは、これらの絶滅危惧種を地球から葬り去ってしまうことを意味しているといえます。

その他の生態系についての記事はこちら → 里山の植物を知る

まとめ

里山に絶滅危惧種が集中しているというのには驚かされます。こうした事実を通して、人は自然を破壊してばかりいるのではなくて、実は共存関係にあったということが理解できるのではないでしょうか。